さあ、ヒトに戻ろう!

『最高の体調』鈴木 祐(クロスメディア・パブリッシング)

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現代人は「文明病」を抱えている

本書のエッセンスは、現代人は「文明病」を抱えている。という主張です。

最近、「なんだか調子が悪い」「なんだかモヤモヤする」と感じたことはありませんか?

この原因不明の不調―それこそが、文明病の症状なのです。

文明病とはなんなのか…

文明病の原因はなにか…

どうすれば文明病から開放されるのか…

その答えが本書に記されています。

「文明病」とはなんなのか?

この症状は、文明が発展したことでもたらされるようになったものです。

ヒトが進化を遂げた時代があります。

それが長きに渡る狩猟採集時代です。

その時代は、数百万年にも渡り続いたと言われています。

そのため、ヒトは狩猟採集時代の環境に適応するよに進化してきたのです。

しかし、その狩猟採集時代にはありえない環境がこの現代にはありふれています。

このような環境がヒトに原因不明の不調をもたらす犯人なのです。

その如何ともし難い不調の原因が本書で明かされています。

そんなことは、現代のヒトである私たちは意識したこともありません。

しかし、問題には必ず原因があります。

問題を解決したいと思うならば、原因に目を向ける必要があるのです。

その原因とは ― ”炎症”と”不安”です。

現代社会がもたらす”炎症”と”不安”が、人々に原因不明の不調を与えているのです。

原因がわかれば、”炎症”と”不安”を取り除き文明病から開放されたい…

そのための方法が本書には記されています。

私たちが心も体もすっきりと、毎日を送るために本書の内容を見ていきたいと思います。

私たちは炎症している

本書では、私たちは文明病を患っており、その原因のひとつが炎症と主張されています。

それも、現代人特有の炎症です。

では、そもそも炎症とはなんなのでしょうか。

その仕組から理解していきたいと思います。

その後で、現代人を悩ませる炎症について説明していきたいと思います。

炎症の仕組み

炎症反応は、体が何らかのダメージを受けたときに起きます。

有害な刺激を取り除こうと免疫システムが起動し怪我を修復すべく働き出すのです。

現代人の炎症

炎症は体の表面にだけ起きる現象ではありません。

体の内面にも、風邪やアレルギー、はたまた関節痛などの炎症もあります。

しかし、現代人の炎症はもっとわかりにくい形で起こります。

風邪のようにわかりやすい症状がでないのです。

はっきりとした自覚症状がありません。

そのため、「なんだか調子悪い」「よく寝たはずなのになぜだか疲れている」というレベルの謎の不調として認識されるのです。

風邪のように高熱で一気にかたをつけるのではなく、とろ火でジワジワと全身を煮込むような形で進行します。

こうした炎症は現代人に特有で、狩猟採集時代には見られなかった症状と本書では結論づけられています。

狩猟採集民=外傷や感染による短中期的な炎症がメイン。激しい発熱や嘔吐など周囲から見てすぐに分かるような症状。

現代の日本人=体内で延々とくすぶる長期的な炎症がメイン。誰にでもわかるような症状はでず、少しずつ不調が進行する。

炎症の要因

本書では、現代人の炎症の3大要因として以下が上げられています。

①カロリーが多すぎる

②睡眠が少なすぎる

トランス脂肪酸や孤独が新しすぎる

全てに言及すると話が長くなってしまいますので、詳細は本書をみて確認してください。

ここでは、①について掘り下げたいと思います。

多すぎるカロリーのおかげで増えてしまうのが、内臓脂肪です。

人体にとって、内蔵脂肪は異物でしかありません。

内臓脂肪が増えると免疫システムが動き始め、脂肪細胞が分泌する炎症性物質が臓器に炎症を引き起こします。

よって、内臓脂肪が減らない限り、体はじわじわ燃え続け、炎症物質が出続けます。

前述のように、自覚症状がないほどの炎症ですので気づかないところで進行し、わたしはちには謎の体調不調として認識されるのです。

私たちは不安である

現代は「不安の時代」である。

不安障害の患者は15年で2倍になったとの報告があるそうです。

2013年にワシントン大学が44カ国のデータをまとめたメタ分析によれば、

不安障害を患う人は、全世界で13人に1人もの割合に達するとのことです。

人生のどこかで不安障害に苦しんだ人の数までカウントすれば、発症率は3人に1人にまではねあがります。

また、日本でも不安障害の数は増え続けており、2011年の厚労省調べでは不安障害の治療を受けている患者の数はおよそ157万人、この数字は1996年のデータの約2倍とのことです。

やはり、「文明化」には現代人の不安を促進する何かがあるのでしょうか。

不安はヒトになにをもたすのか

ヒトが進化する上で有利だったからこそ、不安を感じるよう進化してきたはずです。

不安の存在意義を確認していきましょう。

ひとことで言えば、それは「アラート機能」です。

まだ正体があきらかでない生存の危機を察知し、事前に対策をとれるようにアラームをならすのです。

不安がなければ人類は、未来の危険になすすべがなく、ほどなく絶滅に至ったでしょう。

猛獣に遭遇するかもしれない…

どこかの民族が襲来してくるかもしれない…

今日、食事にありつけないかもしれない…

などと不安を感じることで察知し、それにあらかじめ対処するよう行動できたのです。

原始的な不安

原始時代の不安は、きわめてシンプルだったのです。

危険そのものがわかりやすかったのです。

猛獣に遭う、敵襲が来る、今日の食料がないなどです。

さらには、危険を察知したときの行動の選択肢が限られていたのです。

例えば、逃げるか、戦うか、耐え忍ぶかというようにです。

定義するならば、狩猟採集時代の不安は「はっきりとした不安」だったのです。

現代特有の不安

しかし、現代人たちは数百万年にも及ぶ狩猟採集時代と明らかに異なる環境にいるのです。

1000年足らずで急変した環境は、ヒトが繁栄のため必死に順応してきた時代と比べ、

きわめて異常な状況にあるのです。不安の特性が変化しています。

現代には、簡単には判断できない問題が複数あります。

いまの仕事を続けた方がいいのかやめた方がいいのか…

老後の生活資金はどうなるのか…

このプロジェクトは上手くいくのか…

ほかにも仕事やお金、健康、対人関係に関するものが、無数にあることでしょう。

どれも明日にも起きるかもしれないし、もしかしたら死ぬまでなにもないかもしれません。

「未来が遠すぎる」のです。

人類に備わった「不安」はあくまで目の間前に迫った危険への対策を促すためのシステムです。

いまの瞬間よりも時間軸が未来にある危険に対してはそもそもプログラムが対応していません。

現代人に迫る危険は回避行動の選択肢が無数にあり、しかも判断し難いものなのです。

そのため、不安がすぐ対処できずに長引くのです。

その結果、対処できない危険が山積みになって延々とします。

するとアラームが誤作動を起こし、そのうえ常態化することで自分が何に対して怯えているのかすら、わからなくなってしまいます。

現代の不安を定義するならば「ぼんやりとした不安」なのです。

ぼんやりとした不安の影響

この”ぼんやりとした不安”が私たちにもたらす影響は大きくは3つあります。

①慢性的に記憶力を低下させる

②理性的な判断力を奪う

③死期を早める

この現象は、インターネットとSNSが私たちの生活に定着したことで加速化しているのです。

数百万年かけて進化を遂げた不安という機能は、この1000年の間に起きた変化に

順応することができませんでした。

これらのよくない影響を回避するためにも、一刻も早く不安を取り除く方法を知り、実践する必要があります。

”炎症”と”不安”を取り除く

おわりに

著者

鈴木 祐

新進気鋭のサイエンスライター

1976年生まれ

慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立

10万本の科学論文の読破と600人を超える海外学者や専門医へのインタビューを重ねながら、現在はヘルスケアをテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がける。

 

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